ChatGPTの情報漏洩対策11選!原因と実際の事例を徹底解説
ChatGPTをはじめとする大規模言語モデルの登場により、AIを活用したコミュニケーションや文章生成が身近なものとなりました。一方で、ChatGPTに入力された情報の扱いや、セキュリティ面での懸念も浮上しています。企業や個人ユーザーがChatGPTを安全に利用するためには、情報漏洩のリスクを正しく理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。本記事では、ChatGPTにおける情報漏洩の危険性や実際の事例、企業や個人ユーザーができる対策について詳しく解説します。ChatGPTを活用する上で、セキュリティの観点から知っておくべき重要なポイントを押さえていきましょう。
- ChatGPTの利用拡大に伴う情報漏洩リスクの高まり
- 入力情報の学習による漏洩や、バグによる流出の可能性
- サムスン電子での機密情報漏洩など、実際の事例あり
- 企業は利用ルール作りやセキュリティ対策の構築が重要
- 個人ユーザーも機密情報の入力は控えるべき
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ChatGPTで情報漏洩が起こるメカニズム
ChatGPTに入力された情報は、学習データとして利用される可能性があり、情報漏洩のリスクがあります。また、OpenAI社のセキュリティ体制への懸念やバグ・不具合による予期せぬ情報流出の可能性もあります。
入力情報の学習による漏洩の可能性
ChatGPTは、ユーザーが入力した情報をOpenAIがモデルのトレーニングやサービス向上のために利用する仕組みとなっています。そのため、機密情報をChatGPTに入力してしまうと、その情報が社外のサーバーに保存され、他のユーザーの返答に使用される可能性があります。
OpenAI社のセキュリティ体制への懸念
ChatGPTを提供するOpenAI社にデータを預けることとなるため、同社のセキュリティ上の問題や悪意ある利用が行われた場合、情報漏洩のリスクが生じます。サービス提供者を信頼していても、外部からの攻撃などによる漏洩・流出のリスクは存在します。
バグや不具合による予期せぬ情報流出
ChatGPTの開発元であるOpenAI社は優秀なエンジニアを擁していますが、それでもバグや不具合が存在しないとは限りません。現状で明らかになっていない脆弱性が新たに発見された場合、ゼロデイ攻撃による情報漏洩の可能性があります。
実際に起きたChatGPTでの情報漏洩事例
ChatGPTでは、企業の機密情報や個人情報の流出事例が報告されています。
サムスン電子での機密情報漏洩
韓国のサムスン電子は、ChatGPTの業務利用を許可していたところ、2023年3月に機密情報の漏洩インシデントが3件発生しました。プログラムのエラーを解消するためにChatGPTにソースコードを入力したことや、議事録作成を目的に社内会議の録音内容をテキスト化して入力したことなどが原因でした。
ChatGPTのバグによるチャット履歴タイトルの流出
ChatGPTのバグにより、一部のユーザーに別のユーザーのチャット履歴のタイトルが表示されるインシデントが発生しました。OpenAIは一時的にサービスを停止し、不具合を解消しましたが、他人が見るべきでない情報が流出した事実は重大です。
アカウント情報の流出による個人情報漏洩の危険性
Group-IBの調査報告によると、2022年6月から2023年5月までの1年間で、101,134件のChatGPTアカウントの認証情報が情報窃取マルウェアによって盗まれたことが確認されています。アカウント情報の流出により、個人情報が漏洩する危険性があります。
企業がすべきChatGPTの情報漏洩対策8選
企業がChatGPTを安全に活用するためには、適切な情報漏洩対策が不可欠です。
機密情報をChatGPTに入力しないルール作り
企業がChatGPTを安全に活用するためには、機密情報をChatGPTに入力しないことを社内ルールとして徹底することが重要です。ChatGPT利用のガイドラインを作成し、特定の個人情報や外部未公開の情報、組織の戦略や内部事情に関する情報の取り扱いについて明確にしましょう。社員教育を行い、機密情報の入力は厳禁であることを周知徹底することが求められます。また、ChatGPTの利用状況を定期的にモニタリングし、ルール違反がないかチェックする体制を整えることも効果的です。機密情報の入力が発覚した場合は、速やかに是正措置を講じる必要があります。
「Chat history & training」機能のオフ設定
ChatGPTの設定で、「Chat history & training」機能をオフにすることで、入力内容がChatGPTの学習データベースに蓄積されないようになります。これにより、情報漏洩リスクを低減できます。「Chat history & training」機能は、ユーザーの入力内容をChatGPTの学習データとして利用し、より良い返答を生成するための機能です。しかし、機密情報が学習データに含まれてしまうと、情報漏洩のリスクが高まります。そのため、機密情報を扱う可能性がある場合は、この機能をオフにすることを推奨します。ただし、過去の会話内容を参照できなくなるため、利便性は多少損なわれます。
API版の活用
API版のChatGPTを利用することで、情報漏洩リスクを低減できます。OpenAIのAPIデータ利用ポリシーによると、以下の点が保証されています。
- ユーザーが明示的に同意しない限り、APIを通じて送信されたデータはモデルの学習や改善に使用されません。
- 送信されたデータは不正利用および悪用監視の目的で最大30日間保持され、その後削除されます。ただし、法律で義務付けられている場合を除きます。
- 悪用の可能性が低いユースケースを展開する企業顧客は、APIデータを全く保存しないよう要求することができます。
また、OpenAIは以下のセキュリティ対策を実施しています。
- 厳格なアクセス制御:許可された限定的なOpenAIの従業員と専門の第三者請負業者のみが、不正使用の疑いを調査および検証する場合にデータにアクセスできます。
- コンプライアンス:SOC 2 Type 2レポートの取得、GDPRやCCPAなどのプライバシー法への対応を行っています。また、HIPAAコンプライアンスにも対応しています。
- データ処理補遺(DPA)の提供:顧客との契約に基づくデータ保護が可能です。
- 定期的なセキュリティテスト:OpenAIのAPIに対して、年次の第三者によるペネトレーションテストを実施しています。
これらの対策により、API版のChatGPTを利用することで、自社のセキュリティポリシーに合わせた制御が可能になります。ただし、APIの利用にはOpenAIとの契約が必要であり、導入コストと運用負荷を考慮しつつ、自社に適した利用方法を検討することが重要です。
ChatGPT Enterpriseの活用
セキュリティ面で強化された法人向けのサービス「ChatGPT Enterprise」を活用することで、情報漏洩リスクを大幅に低減できます。ChatGPT Enterpriseは、データの暗号化、アクセス制御、監査ログ機能などが導入されており、高度なセキュリティ対策が施されています。ChatGPT Enterpriseでは、原則的にユーザーの入力内容がOpenAIのサーバーに保存されることはありません。また、利用者の制限やアクセス制御により、不正アクセスによる情報漏洩のリスクを抑えられます。監査ログ機能により、利用状況の追跡も可能です。ただし、ChatGPT Enterpriseの利用には高額な料金がかかります。機密情報を扱う企業には最適なソリューションですが、費用対効果を見極める必要があります。セキュリティ要件と予算のバランスを考慮しつつ、導入を検討しましょう。
セキュリティシステムの導入
ChatGPTと連携可能なセキュリティに強いツールを導入することで、プロンプトの情報やチャット履歴、アカウント情報の漏洩を防げます。例えば、Webアップロード監視機能を持つ「MaLion」シリーズなどが挙げられます。
利用者以外へのアクセス制限
ChatGPTの利用者を限定し、アクセス制限をかけることは、情報漏洩リスクを大幅に低減する効果的な方法です。適切なアクセス制御を実施することで、不正アクセスによる情報漏洩のリスクを最小限に抑えつつ、業務に必要な範囲でChatGPTを活用できるようになります。具体的なアクセス制限の方法として、以下のような対策が考えられます。
- 多要素認証(MFA)の導入:パスワードに加え、スマートフォンアプリやハードウェアトークンによる認証を義務付ける
- シングルサインオン(SSO)の実装:既存の社内認証システムとChatGPTのアクセスを連携させる
- 役割ベースのアクセス制御(RBAC):職位や部署に応じて、利用可能な機能や情報を制限する
- 最小権限の原則:各ユーザーに必要最小限の権限のみを付与する
- IP制限:特定のIPアドレスからのみアクセスを許可する
- VPN経由のアクセス強制:社外からのアクセスを制限し、セキュアな通信路を確保する
- 業務時間内のみアクセスを許可する:特定の時間帯(深夜など)のアクセスを制限する
- デバイス管理:会社支給デバイスからのみアクセスを許可する
- モバイルデバイス管理(MDM)ソリューションの導入:紛失・盗難時のリモートワイプなどの対策を可能にする
これらの対策を組み合わせて実施することで、より強固なアクセス制限を実現できます。ただし、過度に厳しい制限は業務効率を低下させる可能性があるため、セキュリティと利便性のバランスを考慮することが重要です。また、アクセス制限の実施に加えて、以下のような運用面での対策も重要です。
- 定期的なアクセス権限の見直し:不要になった権限の削除や、人事異動に伴う権限の変更を適時行う
- アクセスログの監視:不審なアクセスパターンを検知し、迅速に対応する
- セキュリティ意識向上トレーニング:従業員に対して、適切なアクセス管理の重要性を教育する
- インシデント対応計画の策定:不正アクセスが発生した場合の対応手順を事前に準備する
これらの対策を総合的に実施することで、ChatGPTの利用における情報漏洩リスクを大幅に低減し、より安全な環境でAI技術の恩恵を享受することができます。ただし、技術や脅威の進化に伴い、常に最新のセキュリティ動向を把握し、対策を更新していく必要があることを忘れてはいけません。
Azure OpenAI Serviceを利用する
Azure OpenAI Serviceは、Microsoft Azureのセキュリティ基盤上で稼働するため、高度な情報漏洩対策が可能です。このサービスを利用することで、企業は機密情報を安全に扱いながらAIの能力を活用できます。主な情報漏洩対策機能は以下のようになります。
- 閉域ネットワーク接続:インターネットから隔離された環境でAIを利用可能
- データの暗号化:保存データと通信データの両方を暗号化
- アクセス制御:Azure Active Directoryと連携した厳格な認証・認可
- 監査ログ:AIの利用状況を詳細に記録し、不正利用を検知
- データ保持ポリシー:企業のポリシーに合わせたデータ保持期間の設定
Azure OpenAI Serviceを導入することで、企業は自社のセキュリティポリシーに準拠しつつ、AIの活用による業務効率化を実現できます。ただし、導入にはAzureの専門知識が必要なため、適切な人材の確保や外部専門家との連携が重要です。
ChatGPT連携サービスを利用する
ChatGPTと連携したセキュリティシステムを導入することで、情報漏洩リスクをさらに低減できます。主要な対策として以下のものがあります。
- DLP(Data Loss Prevention)ツールの導入:機密情報の外部流出を自動検知・ブロック
- CASB(Cloud Access Security Broker)の活用:クラウドサービス利用時のセキュリティ強化
- AIを活用した異常検知システム:通常と異なる利用パターンを検出
- エンドポイントセキュリティの強化:デバイスレベルでの情報漏洩対策
これらのツールを組み合わせることで、多層的なセキュリティ対策が可能になります。導入時の注意点として以下のものがあります。
- 既存システムとの互換性確認従業員の業務効率への影響評価
- セキュリティチームの育成・強化
- 定期的なセキュリティ監査の実施
個人がすべきChatGPTの情報漏洩対策3選
個人でChatGPTを利用する際にも、情報漏洩リスクに注意が必要です。
個人情報や機密情報をChatGPTに入力しない
個人ユーザーも、機密情報や個人情報をChatGPTに入力することは控えるべきです。たとえ個人利用であっても、ChatGPTに送信した情報が学習データとして利用される可能性があることを常に意識しましょう。具体的に入力を避けるべき情報は以下のようになります。
- 氏名、住所、電話番号などの個人識別情報
- クレジットカード番号、銀行口座情報などの金融情報
- 医療記録や健康状態に関する情報
- パスワードやセキュリティコード
- 家族や友人に関する私的な情報
- 職場の機密情報や非公開のプロジェクト詳細
これらの情報をChatGPTに入力してしまうと、第三者に漏洩するリスクがあります。代わりに、一般的な表現や仮想の例を使用して質問や会話を行うようにしましょう。
履歴を残さない設定にする
ChatGPTの設定で、入力した履歴を残さないようにすることで、情報漏洩のリスクを下げられます。この設定により、過去の会話内容がOpenAIのサーバーに保存されなくなり、万が一のデータ漏洩時のリスクを軽減できます。設定手順は以下のようになります。
- ChatGPTのウェブサイトにログインする
- 左下のユーザーアイコンをクリック
- 「Settings」を選択
- 「Data controls」セクションを探す
- 「Chat history & training」のトグルをオフにする
ただし、この設定をオンにすると、過去の会話の内容をもとに回答を最適化するChatGPTの機能が活用できなくなり、会話の連続性も失われるというデメリットがあります。利便性とセキュリティのバランスを考慮して判断しましょう。
複数のアカウントを使い分ける
異なる目的や用途に応じて、複数のChatGPTアカウントを使い分けることで、情報の分離と管理が容易になります。これにより、万が一一つのアカウントが侵害されても、他のアカウントの情報は保護されます。アカウントの使い分け例は以下のようになります。
- 仕事用アカウント:業務関連の質問や文書作成に使用
- 個人用アカウント:趣味や日常生活に関する質問に使用
- 学習用アカウント:学術的な質問や研究に使用
- 創作用アカウント:小説やアイデア出しに使用
各アカウントで扱う情報の種類を明確に区別し、アカウント間で情報が混ざらないように注意しましょう。また、それぞれのアカウントに強力で一意のパスワードを設定し、可能であれば二段階認証を有効にすることで、セキュリティをさらに強化できます。
これらの対策を組み合わせることで、個人ユーザーもChatGPTを安全に活用できます。ただし、完全な安全性は保証されないため、常に慎重な姿勢で利用することが重要です。新しいセキュリティ機能や注意喚起が発表された場合は、迅速に対応するよう心がけましょう。
ChatGPTのセキュリティに関するよくある質問
ChatGPTのセキュリティについて、ユーザーからよく寄せられる質問に答えます。
プロンプトの削除はできるのか?
現在のところ、ユーザーがChatGPTに入力したプロンプトを個別に削除する機能はありません。ただし、アカウントを削除することで、関連するデータも削除されます。
入力情報の流出を確認する方法は?
ChatGPTに入力した情報が外部に流出していないかを直接確認する方法はありません。そのため、機密情報を入力しないことが重要です。
セキュリティ面で安心して使える法人向けサービスは?
ChatGPT Enterpriseは、セキュリティ面で強化された法人向けのサービスです。プロンプトの情報漏洩防止や、利用者の制限などの機能が導入されています。
まとめ
ChatGPTは利便性が高い反面、情報漏洩のリスクに十分注意する必要があります。企業は明確な利用ルールとセキュリティ対策を構築し、個人ユーザーも機密情報の入力は控えましょう。適切な対策を講じることで、ChatGPTをより安全に活用できるはずです。
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